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化学・バイオの特許「あるある」ブログ

2020/03/05

おーいお茶 ナチュラルクリア製法2010の特許について、内容を紹介しています。

 

<公報情報>

特許番号4015631号

発明の名称「容器詰緑茶飲料の製造方法」

特許権者 株式会社伊藤園
商品紹介&背景技術の紹介はこちらの記事を。

今回は、特許請求の範囲です。
わかりやすいように適宜改行を加えました。
【請求項1】
緑茶葉を70〜100℃の加温水にて抽出する抽出工程、
得られた茶抽出液にシリカを添加して茶抽出液中のオリ成分を当該シリカに吸着させる吸着工程、
酸処理された珪藻土を用いて珪藻土濾過を行う珪藻土濾過工程、
殺菌工程及び
容器充填工程
を含む容器詰緑茶飲料の製造方法であって、
吸着工程では、シリカを添加する茶抽出液を20〜40℃に冷却することを特徴とする容器詰緑茶飲料の製造方法。

①お茶を入れる
②お茶にシリカを加え、オリ成分をシリカに吸着させる
③珪藻土で濾過する
④殺菌する
⑤容器に詰める

という5工程からなる製造方法ですが、
①でお茶を入れた後に(当然まだ熱いまま)、一旦20〜40℃まで冷やした後に②のシリカ吸着を行う点が特徴です。

ここで、この発明の目的を振り返ると、

 

「長期保存してもオリを発生しない」「加温販売に適した」容器詰緑茶飲料を製造すること

でした。

オリ発生防止に効果があると思われる工程は、上の②の吸着工程と③の濾過工程です。

その他の工程は、お茶入りペットボトルを製造する通常の方法と思われます。①の工程で「70〜100℃」となっているのは、美味しいお茶を入れるのに適した温度ということでしょうね。

では、オリ発生防止ということであれば、吸着可能なものは全て吸着させ、濾過可能なものは全て濾過してしまえばよいのでは?という疑問もわきます。

2020/03/04
このブログで紹介している特許明細書をpdf形式で入手する方法を紹介します。

特許番号4015631号

発明の名称「容器詰緑茶飲料の製造方法」

特許権者 株式会社伊藤園
例として、これを入手してみましょう。

工業所有権情報・研修館の「J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)」というページからダウンロードできます。

① 「特許・実用新案」をクリックし、「特許・実用新案番号紹介/OPD」を選択します。


② 一番下の「特許番号(B)...」の右の枠に、特許番号(今回は4015631)を入れ、照会を押します。



③ 検索結果が出てくるので、「特許4015631」をクリックします。

④ 「文献単位PDF」をクリックし、後は指示にしたがって進めば、文献のPDFファイルを入手することができます。


2020/03/03
このブログでは、化学・バイオ分野の特許明細書から、できるだけ身近に感じられるような題材を選び、内容を簡単に説明しています。

特許明細書を読むコツ

特許明細書の中でも、最初の数ページは比較的読みやすくなっています。

 

最初の数ページには、


1.技術分野・・・どんな分野に関する発明ですか(見出しのようなもの)

2.背景技術・・・その発明が生まれた背景。つまり、「どんな問題・需要がありましたか?」などが書かれている


が書かれています。

後ろのページに行くにつれて、詳細な技術の話に変わっていくため、前知識が必要な場合も出てきます。

しかし、この2つの項目については、導入部分ということもあり、技術内容が平易な言葉で書かれているため、前知識がなくても読んで理解することが可能です。

お茶の製法特許

次は、サントリーの製法特許に続き、別の製法特許を選びました。

今回挙げるのは、伊藤園のおーいお茶。ナチュラルクリア製法2010と呼ばれる製法の特許です。
特許番号4015631号
発明の名称「容器詰緑茶飲料の製造方法」
特許権者 株式会社伊藤園

商品紹介ページ

技術分野

  • 長期保存してもオリを発生しない容器詰緑茶飲料の製造方法
  • 加温販売に適した容器詰緑茶飲料の製造方法

どんな問題があったか(概要)

特許明細書から要点だけをまとめてみます。

例えば、急須でお茶を入れると、完全に透明なお茶にはならず、細かな葉の断片がお茶に含まれてしまったり、少し濁ってしまったりします(「オリ」と呼ばれています)。
もちろん、完全に透明ではなくても、味に問題はありません。

しかし、特にペットボトルとして販売する場合、中身が丸見えになってしまいます。「透明でクリアなお茶」の方が見た目がよく、商品価値も高くなります。

つまり、いかにして「オリ」が少ない透明なお茶を作るかが問題となります。

ちなみに、この特許で取り組んでいる「オリ」とは、「二次的なオリ」と呼ばれているもので、お茶を入れたときに発生するオリではなく、保存しているときに徐々に発生してくる濁りなどのことを言っています。

お茶を入れたときに発生するオリであれば、製造時にフィルターなどでろ過しておけばよいのですが、二次的なオリの場合、さらに別の処理が必要になってきます。

特に、冬場に売られるホット緑茶の場合、二次的なオリの発生が多くなることがわかっているため、この特許では、特に「加温販売に適した」オリ発生防止方法に着目しています。

2020/03/02
サントリーストロングゼロの記事は、今回で最後です。

参考にした特許明細書は、以下のとおり。

 

(サントリーストロングゼロ 特許情報)

特許第4892348号

発明の名称:「アルコール浸漬物またはそれを用いた食品もしくは飲料およびその製造方法」
EP1792974B1
「Alcohol-dipped material, food or drink using the same and method of producing the same」

今回は、個人的に気になった表現「チューハイ」についてです。

図1Aは、市販のチューハイAについてのHPLCのチャートである。

Figure 1A shows the HPLC chart of a marketed chuhai A.
「チューハイ」は日本のものなので、英語に訳すのはなかなか難しいですね。原文にない説明を追加するのも難しいですし・・・

チューハイは、cocktail of Japanese spiritsなどと表現する場合もあるようです。

こういうのって、どう表現するのが正解なのかなぁ。いつも悩みながら訳文を作っているわけですが、いまだに正解がよくわかりません。


2020/03/01

前回の続きです。

 

今回も、サントリーストロングゼロの特許明細書を参考にしています。

 

(サントリーストロングゼロ 特許情報)

特許第4892348号

発明の名称:「アルコール浸漬物またはそれを用いた食品もしくは飲料およびその製造方法」

実施例では、「発明品を実際につくることができますよ」ということを示すために、実験手順が書かれています。

実際につくるだけではなく、実際に思ったとおりの(効果のある)発明品ができましたよ、というのを示す必要もあります。

そのために、どのような装置・方法で評価するか、実際に評価してみたらどうなったか、なども実施例で示されます。

評価方法の1つとして、「官能検査」があります。

もちろん、評価としては、きちんとした数値の形でデータとして出る方がよいのですが、今回のように飲食物などでは、食べた(飲んだ)ときに消費者がどう感じるかが重要な場合があります。

官能検査というのは、人が自身の感覚に従って評価をするもので、いくつかの評価項目について、例えば5段階評価で何?というように数値化をします。

人によって評価が異なるのは普通なので、通常は複数人に検査をお願いし、平均点を計算して評価結果とします。

この特許明細書では、作成したお酒を、(1)そのままで、または(2)50℃で数日間おいた後に飲んでもらい、商品価値の悪化がないか(つまり、まずくなっていないか)を5段階で評価しています。

人間の感覚は、時に装置よりも正確に些細な違いを見分けることができるため、官能検査による評価結果も実施例によく記載されています。

2020/02/29
学生向けに、特許明細書の読み方について講義をすることがあります。

そんなとき、「化学系の明細書は、実施例にレシピ集が書いてあると考えるとよいですよ」と伝えています。

引き続き、サントリーストロングゼロの特許明細書から例をひろってみます。

 

(サントリーストロングゼロ 特許情報)

特許第4892348号

発明の名称:「アルコール浸漬物またはそれを用いた食品もしくは飲料およびその製造方法」

【実施例1】
<レモン凍結粉砕浸漬酒の製造>

簡単に言うと、レモン酒のつくりかた、ですね。

中身は・・・
  • 生のレモン果実を後述する凍結乾燥機に投入できるように4つ切りに分割し、
  • −196℃の液体窒素を用いて凍結した。
  • これを凍結粉砕機に投入し、凍結したまま微粉砕することにより・・・白いさらさらした粉末状の凍結微粉砕物を得た。・・・
  • 次に、凍結微粉砕物を40%原料用アルコールに2日間浸漬した(100g/L)。
  • 得られた浸漬液を珪藻土を用いてろ過して固形分を除き、
  • アルコール40%のレモン凍結微粉砕浸漬酒を得た。

つまり、
①生のレモン果実を4つに切った
②凍らせた
③凍ったまま砕いて粉にした
④40度のアルコールに2日間漬けた
⑤フィルタでこしてレモンの実、皮などを除くことにより、
40度のレモン酒を得た。

という流れになっています。

実施例は、企業で実施する場合が多いので、大規模な設備や分析装置を使用することがよくあります。

そのため、難解なように見えますが、レシピと考えればわかりやすいと思います。

2020/02/28

前回の続きです。


比較しているのは、以下の2つの特許明細書。

 

(日本語の特許明細書)

特許第4892348号

発明の名称:「アルコール浸漬物またはそれを用いた食品もしくは飲料およびその製造方法」

 

 

 

(英語の特許明細書)ヨーロッパの特許です

EP1792974 B

Title of the Invention:「Alcohol-dipped material, food or drink using the same and method of producing the same」

 

 

前回は、発明の名称を比較しましたが、今回は、特許請求の範囲(クレームと呼ぶこともある)を比較してみます。


ちなみに、特許請求の範囲は、日本文と英文では少し内容が異なっている場合がよくあります。
そもそも各国で欲しい権利を取得するためのものなので、違って当たり前ですし、それぞれ少しずつ制度が違うのもあって、参考程度に比較してみると良いと思います。

請求項1を比べてみます。

(日本語)

【請求項1】

(a)原料果実および/または野菜の一種以上を凍結し;

(b)凍結物を平均粒径が1μm〜100μmとなるよう微粉砕し;

(c)微粉砕物をそのまままたは解凍してペースト状にしてから、15%〜100%のアルコールに浸漬して浸漬液を得て;そして

(d)浸漬液を添加する

工程を含む、食品または飲料の製造方法。

(英語)

 

A method of producing a food or drink, wherein the method comprises the following steps:

(a) freezing one or more fruit(s) and/or vegetable(s) employed as a raw material to provide frozen matter;

(b) microgrinding the frozen matter until an average grain size of the frozen matter is 1 µm to 200 µm to provide microground matter; and

(c) dipping the microground matter in an alcohol having a concentration at which one or more components of the raw material can be extracted to provide an alcohol-dipped material, wherein the microground matter is dipped in the alcohol as it is, or the microground matter is thawed to give a paste which is then dipped; wherein the alcohol having a concentration at which one or more components of the raw material can be extracted is a 15% to 100% alcohol;

(d) providing a food or drink from the alcohol-dipped material.

特許請求の範囲は、わけわからん!と言われることが多いのですが、全体として1つの名詞になっていると考えると理解できます。

「どういう権利が欲しいの?」と聞かれ、「○○というもの。」と答えていると考えるとイメージがしやすいのではないかと。

上の例では、日本語では「食品または飲料の製造方法」、英語では「A method of producing a food or drink」について権利が欲しいということであり、それ以外の部分は、「どんなものか」という詳細を示しており、この言葉にかかる修飾です。

日本語と英語で修飾部分の来る場所が逆(日本語では前、英語では後ろ)になっているのは、単純に言語の特性によるものです。

基本構造は、日本語バージョンも英語バージョンも「(a)工程と(b)工程と(c)工程と(d)工程を含む、製造方法。」となっており、4つの工程があるという点では違いはなさそうです。

英文の1行目にある表現をみてみます。

A method of producing a food or drink, wherein the method comprises the following steps:

whereinという言葉も、特許明細書では非常に良く出てくるのですが、あまりなじみはないかもしれません。

Cambridge Advanced Learner's Dictionary には、
wherein = in which, or in which part と書かれています。

whereinの後には、発明の内容 「食品または飲料の製造方法」を更に細かく説明する文章が続きます。

食品または飲料の製造方法なんだけどね、この方法はね、○○という特徴があってね、・・・(延々続く)

みたいな感じですね。

2020/02/27
サントリー ストロングゼロの英日明細書を比較してみます。
(日本語の特許明細書)
特許第4892348号
発明の名称:「アルコール浸漬物またはそれを用いた食品もしくは飲料およびその製造方法」

(英語の特許明細書)ヨーロッパの特許です
EP1792974 B
Title of the Invention:「Alcohol-dipped material, food or drink using the same and method of producing the same」
発明の名称同士で比較をしようと思ったのですが、よく考えると日本語の発明の名称も慣れていないとわかりにくいかもしれませんね。

「または」と「もしくは」の使い分けがされています。
この2つは、法律文書では明確に定義がされており、法律条文などでも明確に使い分けられています。

どちらも書かれている選択肢のどれか、という意味なのですが、「もしくは」の方を小さなブロック、「または」をそれより大きなブロックに対して使います。

ですので、上の発明の名称は、

アルコール浸漬物/またはそれを用いた食品もしくは飲料/およびその製造方法

となり、

  1.  アルコール浸漬物
  2.  それを用いた食品もしくは飲料
  3.  その製造方法
の3つが一緒に書かれたものになります。


「それを用いた」の「それ」と、「その製造方法」の「その」に、the same が使われています。

文章によっては、 thereof が使われることもよくあります。

慣れていないと少しとまどうかもしれませんね。

2020/02/26
いきなり英語のタイトルでスタートしましたコンニチハ。

私の場合、特許翻訳の勉強は、特許事務所でいきなり「訳せ」と言われたところから始まっておりまして。
OJTで怒られ怒鳴られつつ、かれこれもう19年この世界におります。

そもそも技術者(日本語の明細書を書く人です)として入って、結局翻訳の方がメインの仕事になるとは、当時は考えていませんでしたね。

最初のうちは仕事をこなすだけで精一杯だったのですが、そのうち自分でも学習するようになりました。

そのときに使っていたのが、日本語と英語の特許明細書(いわゆるパテントファミリーというやつですね)。

特許を取りたいと思ったら、取りたい国に書類を提出する必要があります。

もちろん、書類は、その国で指定されている言語で作成する必要があるので、内容が同じで(厳密に言うと少し違う場合もあります)、言語が異なる書類が複数発生することがあります。

そして、その書類は、基本的には公開されておりまして、誰でも無料でダウンロードすることができます。

日本語の特許明細書を読み、英語でどのように訳されているのかを見る。逆に、英語の特許明細書を読み、それが日本語にするとどういう表現になるかを見る。

そうやって、明細書の文章に少しずつ慣れていきました(癖があるので最初は読むだけでも抵抗があります)。



さて。タイトルは、ある英文明細書のタイトルなのですが、何の発明かわかりますでしょうか?


ほら、あれですよアレ!🍺


日英で表現を見比べてみようと思います。

2020/02/25
大阪工業大学で論文試験対策講座を担当するようになって、今年で3年目です。

学生さんの傾向として、
1.暗記は得意(頭が若いので)・・・短答試験(一次試験)は突破可能
2.文章を書き慣れていない・・・論文試験がうまくいかない

というのがあります。もちろん、人によって暗記の得意不得意、文章作成の得意不得意がありますが。

1年目は、とにかくたくさんの知識を覚えてもらおうと、あれもこれもと、かなり詰め込んで講義をしました。
しかしながら、あまりうまくいかず。。。2年目、3年目と伝えることを減らして、大事なことは何度も伝えるようにしています。

知識があれば文章は書ける、というものではないこともわかってきましたし。

3年目の今年は、

答えを出すまでに頭の中で考えたことを全て答案に入れる

これをしつこくしつこく伝えています。

言い換えると、

  • 読み手が読みやすいように筋道を立てて書く
  • 流れを省略しない
  • 答案を見ただけで問題を読み返さなくても内容がわかるように書く
  • 導入部分から結論までの流れが素直で、読みやすい
ごくあたりまえの「文章の書き方」ですね。特に目新しいことは言っていません。

ただ、実際に書くとするとなかなか大変です。

全部入れようと思ったら何を書けばいい?どんな順序で書けばいい?と書きながら悩んでもらい、それぞれに自分の文章スタイルを確立してもらうのがゴールです。

4月から1年間、書く練習をしっかりしてもらったので、今の時期になると、それなりに分量も書けるようになります。

私も負けずに文章を書く練習をしなければいけませんね。
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まずは、お話からはじめましょう。

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